ボールの散り方:物理シミュレーションのための統計モデル
by ANSWER Team
LABツール統計物理エンジン
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ボールの散り方:物理シミュレーションのための統計モデル
本日、LABに新しいツール「ショット分散エンジン」を追加しました。このツールは、マーク・ブロディ(Mark Broadie)の「Every Shot Counts」やトーマス・キーリン(Thomas Kielen)の統計モデルをベースに、物理エンジンに組み込むための**「距離に応じた分散パラメータ」**を生成します。
ツールの目的
ゴルフの物理シミュレーションエンジンを開発する際、最も重要な要素の一つが「ショットの分散(Dispersion)」です。プレイヤーのスキルレベルに応じて、ショットがどれだけ散らばるかを正確にモデル化する必要があります。
このツールでは、以下の要素を可視化・生成できます:
- 左右の分散係数: ショットが左右にどれだけ散らばるか
- 前後の分散係数: 距離感の誤差がどれだけあるか
- ショート・バイアス: アマチュアが統計的にターゲットの手前に着弾する傾向
- キャリー:ラン比率: 距離に応じたキャリーとランの比率
主な機能
1. プレイヤープロファイル設定
ハンディキャップに応じたプリセットを用意しています:
- Pro (+5): 非常に精度の高いプロレベル
- Scratch (0): スクラッチゴルファー
- Avg (90s): 平均的なアマチュア(90台)
- High (100+): ハイハンディキャップ(100以上)
各パラメータはスライダーで細かく調整可能です。
2. リアルタイム可視化
- 着弾分布シミュレーション: 100球打った場合の分布をTop Viewで表示
- 距離と分散の関係: 線形モデルによる分散の拡大を可視化
- キャリー:ラン比率: 距離に応じたキャリーとランの比率を表示
3. エンジン実装用データテーブル
50ヤードから300ヤードまで、10段階の距離における分散パラメータを自動生成します。このデータは、物理エンジンでの線形補間(Linear Interpolation)の基準点として使用できます。
統計モデルの基礎
このツールは、以下のロジックに基づいています:
- 分散拡大率: 距離に応じて誤差は線形に増加(y = ax + b)
- 楕円形分布: 縦(距離)の誤差と横(方向)の誤差は独立
- ショートバイアス: アマチュアは統計的にターゲットの手前に着弾する傾向が強い
実装への活用
生成されたデータテーブルは、Markdown形式でコピーできるため、物理エンジンの実装に直接活用できます。実装ロジックの例:
左右分散 = (係数A * Distance) + ベース誤差
前後分散 = (係数B * Distance) + ベース誤差
実際の着弾点(x, y) = (
random_normal() * 左右分散,
Distance - オフセット + random_normal() * 前後分散
)
参考文献
このツールは、以下の研究・データに基づいています:
- Mark Broadie: "Every Shot Counts: Using the Revolutionary Strokes Gained Approach to Improve Your Golf Performance and Strategy" (2014)
- Thomas Kielen: "Statistical Analysis of Golf Dispersion" (関連文献)
- PGA TOUR ShotLink: 公式ショットデータ
今後の展開
このツールは、ANSWERプロジェクトの物理エンジン開発において、重要な基盤データを提供します。今後も、より詳細な統計モデルや、ライの状態(フェアウェイ/ラフ)による分散の違いなど、追加機能を検討しています。
LABで試す: ショット分散エンジン